「初めてのテレビ取材と学び」

 国連が持続可能な開発目標(SDGs)を20161月にスタートしてから6年ほどになります。2030年12月までに達成しようとしています。経済界、社会生活のみならず学校でもSDGsの重要性が叫ばれつづけています。すでに企業においても環境経営が要請されて不可避になっています。特に企業においては温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることが大切で、排出量を減らすことができるカーボンニュートラルのBiomassの導入が増えています。今回の話は6~7年以上先取りしています。

 ESCO事業とは、Energy Service Company の略称で、事業者が自前の資金で省エネルギー改修工事を行い、商業施設や工場にエネルギーサービスを包括的にご提供する事業です。日本では2000年ごろから始まりました。BOO・ESCOとは建設(Built)と所有(Own)と運転(Operate)でESCOサービスの実施形態の一つで、すべて事業者にお任せし、顧客は導入メリットのみを得られるという仕組みです。ESCO事業者は長期契約期間(10年~)で先行投資分を回収します。設備は期間終了後に撤去するか、無償で顧客に引き渡します。

 ESCO事業会社に責任者として席を置いていたころの話です。ある日顧客からの連絡がありました。テレビ放送局から取材の申し込みがあったので事業者として対応するようにとの指示です。 BOO・ESCOで納入したBiomass燃焼プラントを取材したいので、撮影許可と現場でインタビューに答えてほしいとの要望。絶好の機会ととらえ、全面協力を快諾し、担当役員に準備(+インタビュー出演)するように指示をだしました。家屋解体チップを主に利用したカーボンニュートラルのプラントですから、経済効果とCO2削減で社会貢献をしている姿がPRできます。予定の放送番組は経済界のエポックを特集にする結構視聴率のたかい経済番組でした。

 さて実際に放送された内容は以下の通りです。
 MCの女性が述べます。「本日の特集です。建設現場や製材所から出る木くずはこれまで家具などに使われる木質ボードに加工されたり、廃棄されてきました。ところが今、CO2排出削減の目標が掲げられている中、木くずからつくる木質チップを燃料にする動きが広がっています。チップの需要急増で今何が起きているのか。調べてみました。」

 最初の取材先はチップボード(パーティクルボード)の大手会社で、工場長が雑草の生えたチップヤードを前にインタビューに答えます。「2年前までは原料は豊富にあったのに、昨年から、急激に手に入らなくなりました。原料のチップヤードは御覧の通り空の状態です。」まるで誰かが金に物を言わせて買占めしているといわんばかりです。ここを先に取材するという話は事前に聴いていません。

 そのあと、大手化学会社のバイオマスプラントの燃料ヤードの大量の木質チップが映し出された後、ESCO会社の責任者のインタビューです。そこに映っているのは私の部下ではなく、私なのです。彼が急に一昨日の食べ物にあたり、出張できないと泣きついてきました。インタビューをキャンセルするわけにもいかなくて、ピンチヒッターとして、突然マイクを突き付けられました。「本バイオマスプラント導入により、お客様は以前に比べてCO2を大幅に削減されており、コスト的にも十分メリットを出されていると考えています。」200%の緊張でシナリオ通り、ぎこちなく答えました。画面の後ろには、私の会社の名前と肩書と姓名がくっきり映し出されていました。なぜか北海道・東北地区の地図と一緒に。

 そのあとは燃料チップを供給する処理業者も取材して、家屋の解体現場なども映されました。

 20分ほどの特集は終わりました。

 振り返ると特集記事そのものはきれいにまとめられていますが、ESCO会社が資金に物を言わせて家屋解体廃材チップだけではなく、原料用チップまで買い占めているとの構図で番組が作られていることに気づいたのです。後の祭りです。

 学び(反省点)がたくさんあります。

  • なぜ大手化学会社の広報がインタビューに出演せずにESCO会社に振ったのか?
  • 部下の突発的腹痛で緊急のピンチヒッターで無用な緊張をしてしまった。ピンチヒッターはうかつに受けてはいけないこと
  • 番組の取材を受けるときは取材意図(できれば台本)をしっかり把握しなくてはいけないこと。

 今回は取材意図のはき違えも甚だしい。

 さて実際の放送だが、深夜の11時50分からの放送なのでビデオ予約済です。翌日早朝に再生しようとしたが映っていない。放送1時間前に、アリューシャン列島で地震があり、その緊急放送のために30分ほど開始が遅れたために、ビデオが起動しなかったのです。最後の最後まで、予想だにできない突発地震のおまけまでつきました。私の初のテレビ出演の顛末でした。

N.E(JRMN会員)

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