「🍀 Lucky Clover with Four Leaves🍀」

 今から半世紀前の出張報告です。入社して熱媒体ボイラを担当していた独身時代の話です。当時、音楽では初代ジャニーズともいわれる4人グループの「フォーリーブス」が若者にうけていた時代です。

 突然ですが、カレンダーロールという機械をご存じですか。一般的には4本の鋼製ロールの組み合わせが多く、その配列の仕方に英文字の形をはめて、I型、S型、逆L型、Z型、斜Z型などがあります。

 ロールの間に材料を入れて回転させ、延ばして製品を作るための機械です。テーブルクロス、などの「シート」、自動車用シートの「レザー」のような平面状の製品を造ることが出来ます。通常は蒸気で加熱が必要ですが、硬質の塩ビシートになると表面温度は250度を要求され、蒸気ではこの温度を出すことができないので、高温が得意の熱媒体ボイラの出番です。ロールの表面温度を均一にするため、ロール温度制御ユニット「RTCユニット」を考案し、これが好評で、日本のカレンダロールメーカー三社に標準採用されました。ボイラ本体は500万円程度なのにRTCユニットが付くと4000万円に跳ね上がります。

 韓国の大手フィルムメーカーにプラント輸出(逆L型カレンダーロール)が決まり、熱媒ヒータの注文も受け、その試運転調整と指導員として、技術営業の私が渡韓しました。初めての海外出張で緊張の連続でした。最後に三日三晩72時間連続で試作試運転を行うのでへとへとになりました。試運転報告書を英文でまとめるために、お客様の工場長にお願いしたら、秘書を紹介されました。彼女は数日前に工場から釜山市内にバスで帰る時にたまたま隣り合わせた女性で、原子力庁に勤務した時に英文タイプを覚えたことなど色々つたない英語で話しました。2週間の出張が終わり、工場を後にするときに、にやり顔の工場長に呼ばれ小さな封筒を渡されました。タイピストからの英文の手紙でした。「韓国によき思い出をもっておかえりください。あなたに幸せが来ますように。・・・」のコメントと共に、工場で見つけたという四葉のクローバーが添えられていました。その時初めて「Lucky Clover with Four Leaves」が幸せのクローバーの語源だと知りました。1968年にジャニーズ事務所からデビューし一世風靡していた「フォーリーブス」の由来もこれなんだと納得しました。

 帰国後、工場長に「Thank you letter」を送りましたが、内封筒に彼女宛に特別誂えのイニシャルブローチを同封し、感謝の念を伝えました。その後、訪韓したときに再会できたかどうかは、今となっては記憶にありません。

 後日よく調べてみると、フォーリーブスの本来の名前の由来はジャニー喜多川氏が書いた脚本のミュージカル『いつかどこかで~フォーリーブス物語』内のグループ名からとられ『4つに別れる、去る、出発する』という意味の自動詞の「leave」だそうであり、leafの複数形のleavesではなかったようです。「Lucky Clover with Four Leaves」から採用されたのではなかったのです。私の幸せの妄想はかき消されました。しかし私の韓国でのほのかな小さな出来事はこの後者の意味のほうがぴったり合っているのではないかと再度納得したのです。

N.E(JRMN会員)