日本のパン屋さんでも見かけるスコーンは、スコットランドで16世紀に生まれたそうです。中がしっとりしていて重みがある、パンのようなお菓子。イギリスでは牛乳を煮詰めて作る、さっぱりとしてフレッシュなクロテッドクリームやジャムと一緒に食べるそう。パブやカフェでは、「クリームティー」という紅茶とスコーンのセットが提供されるなど国民に愛されているお菓子です。出張の英国内移動でよく乗ったミッドランド航空(日本でいえば国内線主体の昔の全日本空輸に相当します)の機内サービスでもよくセットがでました。
ロンドンのカフェでそのスコーンと紅茶(クリームティー)をカウンターで楽しんでいた時の話です。10歳前後の白人の子供がジュースをもって、嬉しそうに私の隣に来ました。かわいいなと思ってみていたら、バランスを崩して、そのカップからジュースがこぼれました。少量で私にはかかっていませんが、カウンターと床を濡らしました。私は咄嗟に少し体をずらし、ハンカチを出そうとしました。彼は黙っていましたが背後から「Say sorry ooo」と男性の声が聞こえました。お父さんのようでした。しばらくして再び「Say sorry ooo」。ようやくその子は私に向かって「I’m Sorry」といいました。私はとっさに「No problem、don’t Mind」と精一杯の英語で応対しました。私を見てこちらがアジア系の顔だから驚いてすぐに反応できなかったのかもしれません。お父さんから私には直接コメントはありませんでした。アイコンタクトのみです。話はそこで決着です。
そのあと日本だったらどうなっていたのか考えました。おそらく私が親ならその方に「ごめんなさい。どこか汚れていませんか」と直接的に謝りを入れていたのではないかと思います。そして子供に向かって再発防止のために、粗相をしたことに注意したのではないでしょうか。ここでは再発防止ではなく、事故処理の仕方が問われているのです。当事者は子供ですから、子供に謝らせるというやり方に紳士の国イギリスの対処の仕方(責任の取り方)と子供への教育を感じました。日本で同じシチュエーションに出くわしたら「太郎、おじさんに謝りなさい」と言わねばと学習しました。ただ日本文化では、「親のあなたがなぜ謝らないのか」と、追加で文句を言われそうな気もしますが。謝ることは本当に難しいですね。
遠藤憲雄(JRMN会員)
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