「ヨーガン レール 文明の終わり」展 より(金沢 21 世紀美術館)
2017年8月5日~2017年11月5日まで金沢21世紀美術館で「ヨーガン レール 文明の終わり」展が開かれ、今問題になっている海洋生態系への微細プラスチックの脅威をもたらしているプラスチックごみの海洋流出に対する全く異なった視点からの警告を訴えかけていた。1971年ドイツから来日し、以後ずっと日本で暮らしたデザイナーが事故死直前に写真の作品について自分の最後の仕事と位置付けた「文明の終わり」という文章を残した。文字通りに最後の仕事となった。
沖縄にある海辺の家で1ヶ月の3分の1を過ごすようになっていた作者の日課である浜辺の散歩の折、流れ着くゴミの大部分がプラスチックゴミであり、あるとき砂をかき分けてみて、砂と同じくらい細かく砕かれたプラスチック片が、びっしりと混ざっているのに衝撃を受けたという。何とかしたいと思い、デザイナーにできることとして、醜いプラスチックごみから美しい作品を作ることで逆説的に人々に訴えかけるのを最後の仕事とされた。見る者には作品の美しさと漂着プラスチックごみや海洋生態系に害を及ぼす微細プラスチックの脅威とのギャップを埋める想像力が求められるが、天使と悪魔が同居する人間の〈さが〉を克服するのが、日本を愛し、日本に骨を埋めた作者への哀悼になるのではと、〈美しい〉作品群を観ながら心に刻みつけた。
【画像キャプション】《ヨーガン レールの最後の仕事》2011ー2014「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」(東京都現代美術館2015)展示風景[参考画像]―金沢21世紀美術館提供