先日、日本リスク研究学会の春季シンポジウム参加で上京の折、いつものように上野公園を訪れ、国立西洋美術館のアルチンボルド展を観た。ハプスブルク家の三代の皇帝に使え、果物、野菜、植物、動物など世界中のあらゆる生物や時には本などの無生物も使い、寄せ絵として人間の顔を見事に描いて好評を博した画家である。誰もがどこかで一度は見たことがあるはずだ。寄せ絵という手法は日本でも葛飾北斎が人間を用いて人物像を描いている。
展示室に入る前のホールに人の列ができていたので何かと思って観てみると、額縁を模したデイスプレイの前に立った人の顔の輪郭に合わせてアルチンボルド風の寄せ絵を組み立てて、写真に撮れる“遊び”を公開していた。面白そうなので自分も並んで寄せ絵の自画像を写真に撮ったものがこの写真である。
顔の輪郭とメガネを取り入れてそれらしい絵になっている。
最近はIT技術があらゆる場面で活用され、美術の世界でも精巧なイミテーションを作成して本物の代わりに展示して自然劣化を防いだり、絵画の制作過程を解き明かしたりして鑑賞の手助けをしてくれる。
最近は AI 技術が脚光を浴びてもいる。こうした最新技術が遊び心を含めて人間の生活に役立ってくれるのは大歓迎だけれど、一歩間違うと負の影響もあり得る。技術者倫理もコモンセンスとして社会に定着してほしい。
撮影:宮崎隆介(JRMN 会員)