白鳥と対面するブラックスワン(彦根城お濠)
昨年の秋、日本リスク研究学会(日本保険学会と共同で彦根市の滋賀大学で開催)の年次大会に参加した折、「ブラックスワン」のことを初めて知った。
数学者でもある金融トレーダーのナシーム・ニコラス・タレブが 2007 年に刊行した「ブラックスワン」の中で、イギリス人がかつて見たことのない「黒い」白鳥の実在を知り衝撃を受けた注ことになぞらえ、これを「ほとんど起こりえないが、起これば大きな影響を及ぼす事象」と定義している。この本は 2008年のリーマンショックなど国際金融危機を予測したことで有名になった。
注:スコットランド人のキャップテン・クックが 1770 年にオーストラリアに上陸し、初めて目にしたという
国際金融事象だけでなく、2011 年の東北大震災と福島原発事故など自然災害や人為事故(チェルノブイリ原発事故もその最たるものである)においても「ほとんど起こりえないが、起これば大きな影響を及ぼす事象」がある。
リスクには、我々が〈リスクであることを知っているリスク〉(known knowns)、と我々が〈知らない(経験したことがない)ことを知っているリスク〉(known unknowns)の他に、〈リスクであることを知らないこと自体を知らないリスク(unknown unknowns)、いわゆる〈想定外〉のリスクがある。
我々は「想定の範囲」を拡大し、「想定の範囲外」を限りなく小さくしていくことが大事であるが、どこまで行っても〈unknown unknowns〉が残ることを覚悟し、その場合にうろたえない心構えが必要である。
【参考】
「日本保険学会・日本リスク研究学会 2017 連携大会・連携プログラム」
撮影:宮崎隆介(JRMN 会員)